5人の女の物語~純子の場合①
平凡な人生だと思っていた私が、まさかこんな人生になるとはーーーー。
狩野純子、28歳の話を見ていく。
代々受け継がれたトマト農家の次女として生をうける。
家の周りは山と田んぼしかないのどかなところ。
道の駅では大人気なトマトをつくっている我が家。
学校でも少しだけ鼻が高い。
朝起きて、トマト。
学校にもっていくお弁当にもトマト。
夕食にだってトマト。
そんなたっぷりの日の光を浴びたトマトのように、
すくすくと成長した私。
これといった反抗期もなく素直に成長した私の唯一の秘密。
夜遅くまで勉強した後、
両親が寝静まった後にしかみれなかったテレビ。
お気に入りは今はなき、深夜番組のトゥナイト。
ちょっぴりエッチな番組なんだけれども、東京の夜はこんなにも明るいんだって
知ることができた番組であった。
信じられなかった。
夜でもこんなに外出している人がいるなんて。
私のすんでいるところは、夜19時には犬すら外を歩いていないような暗い暗い場所。
トゥナイトが教えてくれたあの世界観は、嘘だろうと思っていた。
その後、地元の商業高校へ進学した私。
毎日、あぜ道を自転車で通学した。
春はカエルをよく引きそうになったっけ。懐かしいな。
高校2年生ごろになると卒業後の進路の話題でもちきりになった。
5つ上の兄が家業のトマトを継いでいて、
私もそのお手伝いをするか、地元の農協へ勤めるか、どちらかだろうなと
漠然と考えていた。
周りの友達も、ほとんどは地元で就職が一般的であった。
そんな中、クラスでも少し派手であった、斉藤信子が東京に行くと言っているようだった。
『私、東京で美容の勉強する』
東京・・・・・・
中学生の時、みていたトゥナイトを思い出した。
この街にはない、ネオン。
眠らない街東京。
斉藤信子は、あの実際にはないであろうと思っていたあの東京に行くと言っているのだ。
心がざわついた。
このざわつきはなに?
嫉妬?羨望?
ううん。私はこの街で生きていく。
初めての自分の感情に純子はとまどいしかなかった。
純子、17歳の秋。
続く。
この記事を書いた田村です。
-
S59生まれのアラサ-人妻税理士。
2018年12月に処女作『ブスのマーケティング戦略』を発売。
ジャックダニエルとメガネ男子が好物。
昼は、チャリで駆け回るフットワークの軽さだけが売りの税理士。法人、個人問わず、会計税務の問題を解決するために日夜奮闘中。
目標なき成長はなし!と女子っぽくない暑苦しい一面をもっている。
しかし、夜は昼から一転。北千住を一人で飲み歩き、店員さんに絡むことが唯一の楽しみという一面ももっている。
家族構成:夫・娘(5歳)
愛読書:週刊SPA
大好きな作家様:水野敬也先生・カレー沢薫先生
田村が書いた最新の記事です。
- 未分類2021.08.022021年8月新刊発売!「フツーな私」でも仕事ができるようになる34の方法
- 雑記2020.12.312020年、珍しく働き続けた。
- 雑記2020.12.25お金にルーズな方の話は話半分。いや、半分以下。
- 雑記2020.08.09鳥肌をありがとう。気づきをありがとう。